七尾美術館と金沢21世紀美術館

 8月に石川に行ったときに、この二つの美術館に寄ってきました。この二つが目的ではなかったので、奇しくも加賀と能登の都にある美術館。七尾美術館は前田利家が築城した小丸山城のあった丘のそばにあって、21世紀美術館の方は金沢城のすぐそば。無理矢理な見方をすると前田利家ゆかりの地を廻ってきたと言えます。

七尾美術館

 正式名称は石川県七尾美術館。今は「オランダの版画とモダンデザイン」展をやってます。父がエッシャーが好きで、この展覧会のポスターにエッシャーの絵が載っていて、それをホテルで見つけたので行ってきました。
 副題が「〜レンブラントからエッシャーモンドリアンリートフェルトブルーナまで〜」というもので、彼らの版画、シルクスクリーンが多くはないものの、ある程度の量がありました。日本オランダ年の企画のひとつとして行なわれたので、オランダの国自体の紹介を挟みつつ、時代の古い絵から並んでました。最後にオランダの企業ポスターに繋がったりするのは、なかなか無茶な展覧会の構成のような気がしたのだけど、あまり多過ぎもせず、人もいないので作品一点一点をじっくり見れて良かったです。
 作品として好きだなと思ったのはエッシャーモンドリアンブルーナの作品。ほとんど見た事あるのだけど、じっくり見ました。特にモンドリアンはの抽象絵画は、ようやく見方が分かってきたようで見ていて気持ちがよくなった。モンドリアンの後にブルーナの作品があって、ブルーナモンドリアンの共通点が見え易かったです。色と形の構成の仕方がすごいですね、彼らは。
 有名なリートフェルトのレッドアンドブルーの椅子*1に座れるコーナーで、座ってみたら、二枚の直線の板で体を支えているのに座り易くて驚きました。どうなっているんだろう。レッドアンドブルーは1/5の模型を組み立てるコーナーもあって、父と組み立てようとしたんですが、あまりにも難しくて挫折。30分以上やったんだけども。

 展覧会も楽しめたのですが、建物も良かった。建物自体、こじんまりとして回り易い構造をしていて、窓からは丁寧に整備された公園が見えます。一体に整備された周りの公園とあわせて、気持ちのいい空間でした。

金沢21世紀美術館

 七尾美術館と比べたら圧倒的に有名な美術館。現代美術を扱いつつ、市民が来るスペースになっているというのは、同じ現代美術を扱いながら、市議会で批判されたこともあるという豊田市美術館と好対照……脱線した。実際、お客さんは多かったです。お盆で駐車場も県外ナンバー*2のオンパレードだったので、観光資源として重要な役割を担ってそうでした。


 ロン・ミュエック展とサイトウマコト展が行なわれていたので、共通チケットを買いました。
 サイトウマコト展は一言で言うと最悪。映画の一シーンをヘンテコなフィルターをかけたようなアクリルの絵がずらーっと並んでいて、どうしようもなくつまらなかった。元ネタの映画を知らないせいかもしれない。
 ロン・ミュエックは、人間の身体にとても近い彫刻を作る人。皮膚や髪の毛がとてもリアル。リアルなのだけど、皮膚の質感がゴム人形を思い出させて、不気味の谷を感じさせます。それは多分意図していること。彼の作品は展示室一部屋につき一個に大体なっていました。巨大な作品が多い一方で、パーツや、制作過程のスケールの小さな人形などを集めたスペースもありました。
 巨大な人形や顔を見ると、ガリバーが来たみたいというシンプルな感想が思い浮かびました。大きな人形に群がる鑑賞者が、小人が群がってるようで面白かった。
 一番の目玉の大きな幼児の全体像は、生まれたばかりのようなペイント(頭に血がこびりついてたり)がされていて、それがとても気持ち悪かったのだけど、父親と母親は、生まれたばかりて本当にこうで、この展覧会の中で一番かわいいと言ってました。僕はメディアを通してでしか生まれたばかりの人間を見た事が無いので、この幼児をかわいいと思える人は、実際に出産を見ている人かもしれない。本物を見た後にこれを見ると、かわいいと思うのかな。


 建築としても有名な金沢21世紀美術館ですが、どこの展示室も光がふんだんに取り入れられていて明るく、円形の構造をしているものの、それがあまりデメリットになっておらず、開放感がある建築でした。ソフト面でみると、現代美術の展示だけではなく、展示室を貸して市民ギャラリーのような事も並行してやっているというのは意外でした。